龍青三 オフィシャルサイト

*

東洋医学・漢方入門(2) 未病治/四診/生長収蔵

      2015/07/11

Sponsored Link

●未病(みびょう)

未病治(治未病)
みびょうち(ちみびょう)
未だやまひならざるを治す

東洋医学(漢方)の基本的な考え方は「まだ病氣になっていないうちに治しましょう」ということです。

現代医学(西洋医学)の概念からすれば、「病名も決まっていないのに治療なんて出来ないのではないか」と思いたくなるような考え方ですよね。

しかしどんな人にだって、先天的に持って生まれた素質・体質というものがあるんです。
DNAレベルの遺伝的なものから、仕事、環境、生活習慣などによって、先天的にかかりやすい病氣というものがあるんです。

そこへもってきて、肉体的ストレスやら精神的ストレスを受けたとき、
「あぁ、あー、疲れたー」と思わず口に出したくなるような疲労がたまってきます。
そういう状態になりますと、そこから先、一目散に病氣に向かって歩きはじめるということになってしまうわけなのです。

素質とか体質というのは例えば、骨太であったり華奢だったり、黒人のように水に浮かないくらい筋肉質だったり、
脂身体質だったり、両親や先祖が特定の内臓疾患を持っていたり、幼い頃に怪我をした、身体のどこかを強打した、重い病氣にかかったなど、
そのような要因が素質、体質を左右します。

生活習慣については、食べ物の好き嫌い、仕事や普段の生活の中で身体のどの部位を酷使しているのかによって違ってきます。

たとえば、パソコンを一日中見つめていなければならない仕事なのか、手を使うことが多いのか、膝、腰、背中に負担がかかる仕事なのか、
自然光と縁のない環境なのか、冷暖房がききすぎている環境なのか、いつも追われるような忙しい仕事をしているのか、
人間関係の問題でストレスがたまったり、会社が左前でいつ倒産するかわからない、そんな心配事や将来への不安に苛まれているのか、などなど。

特別症状もなく病氣という訳ではないし、日常生活も仕事もそれなりにこなしてはいるけれども、イマイチ身体や氣分がどうもすぐれない……という状態ではありませんか?

このような状態のことを半健康状態といいます。
東洋医学(漢方)ではこの半健康はもちろんのこと、自覚症状のない状態でも病氣とみなす事があります。
またこういう状態は治療の対象になります。

それはなぜかというと先に書いたように、素質・体質・習慣がすでに病氣の傾向をすべて内面に含んでいるからなのです。
その傾向を、もとの状態
【平(へい)】に戻し、ストレスや疲労を取り除き、病氣から遠ざけることが東洋医学の基本的考え方なのです。

病氣になってしまってつらい思いをする前に、出来れば具合が悪くならないうちに普段から治療を心掛けたいものですよね。

三千年もの昔から診察・診断法が蓄積され伝えられ、現在に至っているのです。
これこそまさしく東洋医学の叡智であるところの「未病治」なのです。

Sponsored Link

●四診(ししん)
望・聞・問・切
ぼう・ぶん・もん・せつ

額の眉間部分の色つやを見ただけで、その人の健康状態、病氣の状態が分かってしまいます。

これを神(しん)なる技といいます。また、声の音階や呼吸音の変化、体臭や口臭を嗅いでわかる技能を聖なる技といいます。

生理状態(食欲・睡眠・排泄など)や身体の各部の状態を質問してわかる技能を工なる技といいます。

さらに身体のあちこち(経絡や腹)に触れたり、脈を診たりして判るという技能を巧なる技といいます。

見て診察することを「望診(ぼうしん)」といい、聞いたり嗅いで診察することを「聞診(ぶんしん)」といいます。
※日本酒の匂いを嗅いだり口に含んで品定めをする「利き酒」のようなものです。

患者さんの訴えを聞いたり、患者さんに質問する事を「問診(もんしん)」といいます。

触れたり、脈を診ることを「切診(せつしん)」といいます。
※「切」は音が「接」と同じなので同義とし、古典に記されたままの字を使います。

東洋医学では以上の四つの診察法をまとめて「四診」と呼び、四診を駆使することで患者さんの素質・体質・病氣の状態を診断します。

四診は訓練によって、
巧(切)・工(問)の技から、
聖(聞)→神(望)なる技へと研鑚することができるといわれています。

しかし、匂いについては、現代の日本人はほとんど毎日入浴していますし、パッと見た顔色もお化粧で隠れたりしていますので、望診や聞診は更に難しくなっています。

人の精神活動や生命活動を「神(しん)」或いは「神氣(しんき)」と呼びます。
これも見(診)て聞きます。

「得神(とくしん)」は意識清明で目に輝きがあり、瞳の動きは敏活、言葉は明瞭、反応は機敏、手足は思いのままに動く、そんな場合は病状は軽いものです。
それは精氣が充実しているからです。

「得神(とくしん)」に対して、すべて逆の状態を「失神(しつしん)」といい、精氣が衰退していることを表しています。

患者さん一人一人の神氣をつぶさに観察し、生命力、そして疾病の軽重や予後を判断できるのです。

古典に『上工治未病 下工治已病』という言葉があります。

これは、
「良い医者はまだ病氣にならないうちに治療し、悪い医者はすでに病氣になってしまってから治療する」ということです。

つまり、普段から氣をつけて診ていれば、治療もより容易になるということです。

●生長収蔵
春夏秋冬は自然界では生長収蔵のサイクルであるといいます。

春は生ずる。
草木は芽吹き、動物は巣から這い出てきます。

夏は長ずる。草木はどんどん伸びて花々を咲かせ、葉を茂らせます。
動物たちも沢山食べて成長します。

秋は収(おさ)めます。
ひきしめるの意もあります。
葉を落として根、幹、種子を温存するための準備をします。
動物は実りを腹に蓄え、徐々に姿が見えなくなります。

冬は蔵(かく)す、蔵(かく)れる。
草木も動物も春と夏に吸収した陽氣を、生命にとって厳しい冬の間、来るべき春を待って蔵し続けるのです。

陽氣は元氣、万物を育み生かすエネルギー、ここでは温暖な氣と言ってよいでしょう。

それに対し、陰氣は殺厲(さつれい)といわれ、病や災いをもたらす氣、寒冷の氣です。

秋から冬にかけて陰氣が満ちていき、陰氣が支配する季節。

春から夏は陽の氣が満ち、陽氣が支配します。

中国最古の医学書である、黄帝内経(こうていだいけい) から引用してみましょう。

春の三ヶ月は夜寝て、早起きをしてゆっくり散歩しなさい。
髪は解きほぐしてゆるめに結いなさい。そして氣持を生き生きさせなさい。

夏の三ヶ月は夜寝て、早起きをして、一日が長い事を嫌がらず、開け放って(愛でるところ、外にある如く)、氣持は愉快に花ある植物と同じように心を開いて暮らしなさい。

秋の三ヶ月は早く寝て、鶏とともに起きて氣持を安らかにしつつも、少しひきしめるようにしなさい。

冬の三ヶ月は早く寝て、日の光がさすのを待って遅めに起きなさい。
人に他言できない私情があるかの如く、氣持を伏せて隠すように暮らしなさい。

そうすれば、春~夏の陽氣を身体に取り入れてそれを温存し、秋~冬の陰氣を遠ざけて、元氣に暮らす事が出来ます。それが養生の道です。
冬の「早臥晩起」と記されているのが象徴的で、陰の季節の陰の時の、最も大氣中の陰氣が強い時を避け、陽氣を体内に蔵しておく術を述べています。
冬に汗することも陽氣を泄らすとして禁じています。

夏は陽氣を取り入れる時なので、余った陽氣は汗として泄らしつつ、陽氣の中にいる方が良いのです。

ですから、東洋医学の叡智をもってすれば、多少暑くても、適当な汗をかきながら過ごすのがよいのです。

冷房は使わないほうがいいとは云いませんが、なるべく控えめにしたほうがよろしいのではないでしょうか。

Sponsored Link

 - 教養・雑学豆知識

スポンサーリンク

Comment

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

  関連記事

tanbayasunori
漢方医 丹波康頼 日本最古の医学書 医心方撰者の生まれ変わりが存在していた!

漢方医学(東洋医学)のあゆみ 日本には遣隋使・遣唐使によって、また朝鮮経由で中国 …

141025_000
東洋医学・漢方入門(3) 五色と艶/脾弱/早臥晩起/お風呂の温度

五色とツヤ 古典医書のなかに『死不治』という表現があります。 これを 「死ス、治 …

140612_004kanpou
東洋医学・漢方入門(1) 自分の体質を知る/運命学と東洋医学

体質について 普段から健康に関心をもっている私たちは、よく『体質』という言葉を使 …

munoushogen140512_000
【無能唱元先生】 自律と自立~他者依存は自らのエネルギーを失う

無能唱元先生のお話より 朝日新聞の「天声人語」欄に、次のような興味ある記事が載っ …